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日々のメモ

忌まわしき追憶の断片

トラウマをもつ。誰しもが、だ。だからモチロン、ボクにもトラウマはある。でも、それが何なのか明確にはわからない。知っているが、知らない。トラウマは隠されて、忘れられる…。そして、思いがけなく思われるところで、回帰する。

 

 

 

もう3年近く前のこと。夏休みに山へ行った。泊まりがけで写生をしに行く行事があった。

                                 

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澄んだ川があって、生いた緑があった。黒い岩間の先に蒼い空があった。雲が流れてた。川は広く深く、クラスメイトの女生徒3人と水を蹴って飛沫を服に飛ばしあった。水面に口を近づけたヤマユリが揺れる。石の光る地面の上で母の握ったおにぎりを食べてる彼女とは半年後に交際関係になり決して〈良い〉とは言えない別れ方をする。ほかの女生徒たちも笑ってる。

 

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深夜(もう2時をまわっていた)、先生の目を盗んでボクと4、5人の女生徒は宿泊先の廊下にある休憩スペースに集まった。たしかこのときいた女生徒はクラスのなかで最もJK感溢れる子達だった気がする。赤いソファ、緑に光る非常口の案内、唸る自販機、寝静まったドア。ボクはアンディのマリリンの服を着てたのだが、側からみたらちょっと怖かったらしい。

 

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1人の女生徒がボクに話しかける。当時、この女生徒は恋人のために苦悩をしていた。よく話を聞かせてくれた。彼女は美人とクラスで噂されていた。また、極めて胸が豊かなことでクラスメイトの間で評判だった。

 

彼が、悪い友人と危ない遊びをするの。彼が、浮気を疑ってくるの。彼が、怖いの。彼が、彼が、彼が、彼が。わたしは、尻軽じゃないんだよ。

 

ほかの3人はどこかに行ってしまった。笑い声だけが聞こえる。ボクは星が見たくなって〈悩める女生徒〉に、星が見たいんだ、と言った。それで、最上階の廊下の窓から星を見た。でも、たしか見えなかった気がする。あんなに晴れてたのに、曇ってしまった。3人の足音がする。ここにいたんだ、彼女たちはニヤニヤしながら言う。あんたたち怪しい!

 

そのあと、再びボクは〈悩める女生徒〉と2人きりになってしまった。また怪しまれちゃうね、〈悩める女生徒〉は言う。でも誰にも聞かれたくない相談があるの、と続ける。ボクは当時、純情(というよりマヌケ)だったので、彼女と密に話せる空間を探した(よせやいいのに)。浴場の脱衣所が適所だった。ここなら誰もこない。床に廊下の灯が落ちる。暖簾が影を落とす。

わたし、辛い。〈悩める女生徒〉は声を震わせる。ボクは彼女の足先を見つつ話を聞いていた。彼女は泣いてた。どうしようどうしよう。そんな涙を垂らさないでおくれよ。ボクは彼女を抱擁して慰めることにした。大丈夫だよ、彼氏さんはキミの話を聞いてくれるんでしょう?心配することないよ。大丈夫。––––自分の声がなんか浮ついてるのがわかる。

 

と、突如。〈悩める女生徒〉はボクに接吻した。上歯と下歯の間に彼女の舌が入り込む。生温かい。熱い鼻息がボクの鼻を掠る。困惑したボクは彼女から離れて、眼をみた。そのとき、心臓にぽっかり穴が開いたような感覚に襲われた。もう、なんか物理的に風穴を感じる。

 

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微光にさらされた〈悩める女生徒〉の眼は、濡れつつ、本当に「とろり」としている。見たことない。こんな、女の眼。暗闇のなか眼だけが光にさらされている。言うなれば、闇のに浮かぶ眼玉。頬も紅い。さらに、彼女はボクの片手を掴んで自分の胸に押しやった。下着をつけていなかったみたいだから、胸の柔さも形も突起もわかった。彼女は「とろり」とした(そして不気味な)眼差しで聞く。「どう?」風穴が広がるのがわかる。「あなたが最後に女性にこういうことしたのって何時だった?」

 

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誰かの足音を聞いたボクは彼女の胸から手を離して、すぐにその場を去った。脱衣所から出るとき、一度だけ振り返ると、彼女は椅子に腰掛けて携帯をぼんやり眺めていた。部屋に戻ったボクは寝床へ逃げた。恐ろしかった。

 

 

それから1年後の秋、〈おむすびの女生徒〉と性交しているとき、彼女の眼に〈悩める女生徒〉の眼をみた。そっくりだ。また胸に穴が開いたような感覚を覚える。はじめての性交じゃないのに、きみ、そんな眼をいままでボクに向けたことあったっけ?

心臓が震える。猛烈な痛みと嘔吐感。眼を瞑ってしまったかもしれない。なんか、彼女に「食べられてしまう」ような感じさえした。その一ヶ月後、僕は別れを申し出た。