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日々のメモ

『日本狂詩曲』の名盤 ––––– その4

 

沼尻竜典 / 東京都交響楽団

 

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片山杜秀編集の「日本作曲家選輯」シリーズの記念すべき第一弾に収録されている。邦人作曲家たちの世界発信の力に多分になりうるであろうこの企画を遂行したナクソスには感謝します。沼尻竜典氏(1964〜)は恐らくこれしか伊福部を振っていない。

第1楽章のヴィオラがとてもよい。風狂な雰囲気が満載である。ヴィオラ木管、打楽器、ピアノの重奏も丁寧な印象。しかし、第2楽章の掠れた感は否めない。冒頭、タンブリンの出だしの間違いが気になる。本来ならトランペットソロと重なる形で、始まるはずなのに、ソロが終わっての次の小節からはじまっている(余談だが「日本作曲家選輯」シリーズのヤブロンスキー指揮による『シンフォニア・タプカーラ』の第2楽章にもティンパニの抜けがある)。丁寧な演奏、準音楽性を目指した態度は汲めるのだが、少々打楽器がスマートでひ弱な点はいただけなかった。第1楽章は素晴らしいのだが。

 

演奏 ★★半

録音 ★★★★

総合 ★★★1/4

 

 

日本管弦楽名曲集

日本管弦楽名曲集

 

 この録音もYouTubeにあり。

 

 

広上淳一 / 日本フィルハーモニー交響楽団

 

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伊福部昭の芸術」シリーズの記念すべき第一弾は、広上淳一氏(1958〜)と日本フィルハーモニー交響楽団による管弦楽作品三作(『日本狂詩曲』、『交響譚詩』、『土俗的三連画』)。私が『日本狂詩曲』にハマるきっかけとなった演奏である。名盤として推薦できると思う。

第1楽章のヴィオラは岩城指揮や沼尻指揮の盤と比べるとややあっさり気味。ただ、ピアノ、打楽器の音がよく聴こえる。息も合っていて、とても安心して聴くことができる。弦楽のレガートも丁度良く、低弦の妖しさも抜群だ。第2楽章は割と速め。そしてなかなかの爆演系の仕上がりである。この演奏のよいところは過激な表現なのに、しっかりピアノや小さめの打楽器の音が聴こえてくるところだと私は考えている。それでいて粗さを感じさせないのは指揮者とオケの力量に他ならない。ラストに近い、私が最も好きな部分も大変素晴らしい。土臭さが欠けるように思われるかもしれないが、それでも名盤として薦められてよいのではないだろうか。

録音は文句なし。「日本作曲家選輯」シリーズといい、「伊福部昭の芸術」シリーズといい、歴史に埋もれてしまう危機のある名作、作品たちをよい録音で残すことの意義は言うまでもなく大切である。聴く側の私たちは最大限の有難さを関係者各位に抱くところであります。本当にありがとうございます。

 

演奏 ★★★★

録音 ★★★★★

総合 ★★★★半

 

譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽

譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽

 

 尚、この録音もYouTubeにあり。

 

 

本名徹次 / 日本フィルハーモニー交響楽団

 

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本名徹次氏(1957〜)の伊福部昭を私は好まない。伊福部作品をたくさん振ってくださっており、その点への感謝は尽きないのだが、演奏には首を傾げてしまう。従ってあまり聴く気がおきない。おそらくこの方の伊福部を聴く感覚的な資格が私には無いのだと思う。カップリングされている『フィリピンに贈る祝典序曲』と『SF交響ファンタジー第1番』は、貴重さと演奏の良さから推薦できるのだが、他の作品は粗さ、平坦さ、アンサンブルの弱さが気にかかる。

第1楽章はアンサンブルのズレが気になる。ヴィオラは特に艶やかさや妖しさを感じさせることもなく終わってしまう。第2楽章の方は熱はあるものの、なにか平坦な印象を持ってしまう。とはいえ、最後のアッチェレランドの畳み掛けは極めて情熱的である。

録音の質はライヴのためかあまり良くない。おそらく録音の質が評価を落としているところは多分にある。残念。

 

演奏 ★★

録音 ★★

総合 ★★半

 

伊福部昭の芸術(8)特別篇 卒寿を祝うバースデイ・コンサート 完全ライヴ

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(次回に続く)